夢色メイプルシュガー
「ちょっと、宗谷くん!」
私を驚かせたその彼に、抗議の言葉をぶつける。
宗谷くんと私は、掃除当番の班が一緒。
今週はこの教室が当たっていて、彼はさっきまで黒板掃除をしていたはずなんだけど。
今はチリトリを構えて、私の前に立っている。
黒板はもう終わったんだろう。
「なんか暗い顔してっけど、どうかした?」
「そ、そう? 気のせいじゃない?」
私はごまかすように、サッサッっとほうきを動かしながら前へ進んだ。
前から思ってたことだけど……宗谷くんって、案外鋭いのよね。
さっきのもそうだし、夢のこともそうだし……。
なんでわかったんだろ。
本当によめない。
よめないといえば、この前もそう。
怒らせちゃったと思ったのに、その日のお昼休みにはいつもと同じ様子で話しかけてきて。
だから、私の思い過ごしだったのかなって。
そういうことにしておいた。
「おーい、渚ー。早く帰るぞー?」