夢色メイプルシュガー
「渚くんってば、急に彼女とデートの予定でも入ったんですか〜?」
ああ、なるほど。
デートって、だからそんなにニヤニヤと。
でもごめんね橘くん、それはハズレです。
「あー……。まあ、そんなとこ?」
へっ……!?
びっくりして、変な声が出そうになった。
そんなとこって宗谷くん、あなた何を──。
「うそつけ、彼女いないくせによくゆーわ」
「わかってんなら言うなっての」
「いやね、親友の俺としては心配なのだよ。そろそろ君にも──」
「うっせー。お前もいねーだろ」
言い合いながらも、どこか楽しそうなそのやり取り。
私はホウキを握り締めたまま、橘くんが帰るまでの間、ボーッとその様子を眺めていた。
*
「ねぇ、宗谷くん」
どこへ向かってるんだろう。
わかってるのに、わからない。
そんな不思議な帰り道。
宗谷くんと二人並んで歩きながら、私はそっと、小さく胸に芽生えた思いを声に乗せた。
「訊きたいことがあるんだけど」