夢色メイプルシュガー
「ん?」
首を斜めにした宗谷くん。
私はその様子を確認し、カバンの持ち手をぎゅっと握る。
震える唇。
だけど、なんとか動かして。
「……どうして宗谷くんは、私のこと、誰にも話そうとしないの?」
そっと訊ねた。
人の秘密は、知ってしまったらどうしても他の誰かに言いたくなってしまうもの。
そう、私は思っていた。
だから宗谷くんに放課後の秘密を知られてしまった時、怖かった。
噂になって、色んなところに広がって、おもしろおかしく囃し立てられるんじゃないかって。
……だけど違った。
彼はきっと、誰にも話してない。
ううん。
さっきの様子じゃ親友の橘くんにさえ黙ってくれている。
絶対に、誰にも話してないんだ。
「んー」
少しの沈黙のあと、僅かに唸り声が聞こえた。
そして──。