夢色メイプルシュガー


「芽衣が、『誰にも言わないで』って言ったから」


腕組みをしていた手を解いてから、宗谷くんは真っ直ぐにそう言った。


え?

拍子抜けだった。


「それ、だけ?」

「うん」


“当然だ”と言わんばかりに、目の前の頭が縦に動いた。


信じられない。

理解できない。


……でも。


そうだ、彼は……。

宗谷くんは、こういう人だったんだ。


「……ふふ、ふふふっ!」


おかしくってたまらない。


ずっと見つからなかった答えが今、やっと見つかった。

思えば、難しく考えすぎてたのかもしれない。

もっともっと、単純でよかったのね。


お腹を抱えて笑っていると、宗谷くんが不思議そうに眉を寄せた。


「なに笑ってんだよ」

「ごめんなさい、ただ......」

「……?」

「ただね? 宗谷くんってとっても優しいんだなぁって、そう思っただけ」


チラリ、窺うように目を動かす。

すると宗谷くんは、スッと視線を向こうへやった。


「……別に。誰にだってそうなわけじゃねぇよ」

< 72 / 228 >

この作品をシェア

pagetop