夢色メイプルシュガー
「芽衣さんは、なんのケーキが一番好き?」
「タルトです! 特に、ここのメイプルタルトが大好きで……」
「俺も。気が合うな芽衣〜」
即答した私に続いて、どこか嬉しそうな口調で宗谷くんがそう言った。
気が合うって……。
反応に困っていると、「ンン!」と咳払いする音が聞こえてきた。
「それなら、タルトを作ってみようか」
そういうわけで、さっそくタルト生地を作る準備に取りかかる。
私は教えてもらった道具と材料を、全部手元に集めた。
必要なのは、ボウルとホイッパーとタルト型と、バター、塩、卵、粉糖に、薄力粉。
それから、アーモンドクリーム用にアーモンドプードルも。
タルトは昔に一度だけ、一人で作ってみたことがある。
だけどその時はあまり上手くできなくて、撃沈。
またこうして、チャレンジする日が来るなんて……。
「よし。じゃあこれを、クリーム状になるまでしっかりと練って?」
「はい!」
ボウルに入ったバターを、ホイッパーでゆっくりと混ぜる。
四角い塊から、徐々に形を変えていくそれ。
もっとなめらかに。
もっとやわらかく。
もっと、もっともっと……!
私は無心で腕を動かした。