夢色メイプルシュガー


「では、失礼します」


隅に置いてあったカバンを手に取り、ぺこりと一礼する。

その後すぐ、宗谷くんが「送るよ」と言ってくれたけど。

私は、気持ちだけを受け取ることにした。


「ありがとう、大丈夫だから。またね」



そして、名残惜しくもお店を後にしようとした時。


「ちょっと、いいかな」

「え?」


なぜか私は、ポンと宗谷さんに後ろから肩を叩かれたんだ。







「ただいま」


気づけば、夜の9時を回っていた。


……お母さんになんて言おう。

嫌な汗が出る。

塾の日以外、私がお母さんよりも遅くに帰宅することは、今までになかったから。


< 78 / 228 >

この作品をシェア

pagetop