夢色メイプルシュガー
「では、失礼します」
隅に置いてあったカバンを手に取り、ぺこりと一礼する。
その後すぐ、宗谷くんが「送るよ」と言ってくれたけど。
私は、気持ちだけを受け取ることにした。
「ありがとう、大丈夫だから。またね」
そして、名残惜しくもお店を後にしようとした時。
「ちょっと、いいかな」
「え?」
なぜか私は、ポンと宗谷さんに後ろから肩を叩かれたんだ。
*
「ただいま」
気づけば、夜の9時を回っていた。
……お母さんになんて言おう。
嫌な汗が出る。
塾の日以外、私がお母さんよりも遅くに帰宅することは、今までになかったから。