夢色メイプルシュガー


『……おいしい』

『本当!?』

『ええ、とっても』


やっ……やったあ。


『俺もいただくよ、芽衣』

『うん……!』


嬉しくなって、一口食べてみる。

ところが。


『……ん!?』


びっくりした。


何これ。

パサついてて、全然おいしくない。

だ、ダメだ、どうしよう。


『ごめんなさい! 私、失敗しちゃったみたいで……。二人とも、もう食べなくていいから』


慌ててお皿を回収しようとする。

だけどそれは、すぐに阻まれてしまった。


『おいしいって……私、言ったでしょ?』

『……っ』


お母さんは、見たことのない顔をしていた。


『そうだな、とってもおいしいよ』


お父さんの優しい声が、それに続く。


『ありがとう、芽衣。こんなにおいしいケーキ、初めてよ』

『どうして......』

『芽衣が私のために作ってくれたんだもの。最高のプレゼントだわ』


おかあさん……。

やめて……よぉ……。


その目には、いっぱい涙が浮かんでいて。

気づけば私の目にも、同じものが溢れてきた。

< 85 / 228 >

この作品をシェア

pagetop