夢色メイプルシュガー
「じゃあ、50ページ開いてー」
金曜日の一時間目は、国語と決まっている。
それも、古典。
今日は大好きな『源氏物語』で、特に最高だわ!
……と言いたいところだけど。
どうも頭が回らない。
集中出来ない。
だって──。
『好きだよ?』
いきなり、宗谷くんがあんなこと言うものだから。
……それなのに。
「宗谷くん、起きなさい」
先生に叩き起される彼、居眠り王子。
まったく。
すやすやと眠れるなんてどういう神経してるんだろう。
やっぱりあの言葉に深い意味はなかったのかもね……。
うん、きっとそうだわ。
なんだか、自分が馬鹿らしくなってきた。
これじゃあまるで、私だけ意識してるみたいじゃない。
私だけ......。
そうよ!
なんであの時、普通に答えられなかったんだろう。
宗谷くんはお友達。
それしかないじゃない。
なのに──。
「はぁ」
ダメだわ。
うだうだ考えてても仕方ない。
私は“よしっ”と心で呟いて、脳内を授業モードへと切り替えた。