どっきゅん♡LOVER
「もう少ししたら行くわよ」
「今すぐ」
「……」
「今すぐ」
「……はい」
もう、ほんと空気読めないんだから。
あたしは渋々修平から離れる。
するとどこからか、ブー、ブー、とくぐもったバイブ音が響きだした。
「はい、もしもし」
応答したのは、日野っち。
そのまま何気なく見続けていると、急に目線がぶつかって。
強ーい目力で、“いいですね?”と伝えてきた。
わかってるって。
あたしが口パクで返すや否や、日野っちはケータイで話しながら階段の方へと歩いていった。
……しかたない。
「修平、ちょっと待っててね」
上目遣いでそっと言う。
気は進まないけど、あいさつは絶対だしね。
嫌なことは早く済ませるか、と重たい足を動かした丁度その時だった。
「沙弥ちゃん、こんなところにいたんだ」
聞こえた声に顔を向けると、バチっと目と目が合った。