どっきゅん♡LOVER


「おはようございます」


あたしは反射的にしっかりと腰を折って礼をする。


びっくりした。

今会いに行こうとしてたその人が、突然目の前に現れたんだもの。


「今日はよろしくね」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


差し出されるまま握手をし、ニッコリと微笑んだ。


次の瞬間。


「実は俺……」


そう囁くように言って、いきなり手を引いてきた彼、市川歩武。


何!?

ぎょっと目を見開くと、彼は途端に距離を縮め、その瞳を潤ませた。


「沙弥ちゃんと一緒の撮影が楽しみで、昨日はよく眠れなかったんだ」


えっと、そんなこと言われても困るんですが。


ほんとはそう返してやりたかったあたしだけど、そこはちゃんと弁(わきま)えてる。


「ヤダ〜、市川さんったら〜!」


しっかりと微笑んで、自然な流れでヤツを押し払った。

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