どっきゅん♡LOVER
躊躇いもなく落された言葉に、急に目の前が真っ暗になった。
あたし。
市川歩武に……キス、されちゃったの?
うそだ。
まさか。
そんなわけ。
だって、脚本では寸止めで。
信じられない。
本当に信じられない、のに。
……いやだ。
冷たい海に突き落とされたように、次々と体温が奪われていく。
なんで……。
修平……っ。
「あ、沙弥ちゃん!」
ダッと駆け出す。
無意識に。
考えもなく。
赴くままに。
あたしはそれを必死で拭いながら、足を動かし続ける。
「ハァッ、ハァ……ッ!」
ただ、
“消えてしまいたい”
そんな感情だけが、この時あたしの心で激しく暴れていた。