どっきゅん♡LOVER


──コンコン。


「沙弥さん」


うるさい。


──コンコンコン。


「沙弥さん、聞いてますか」


うるさい、うるさいっ。


「いや……!」


とっさに耳を塞ぐ。

聞こえる音が、声が、全部鋭い剣のように全身に突き刺さって、仕方がなかった。


「……もう、ほっといてよ」


小さな息とともに、そんな頼りない声がポツリと空間に浮かぶ。

静まり返った部屋。

ゆっくりと力の抜けていく手が、雪崩のように落ちて地面に触れた。

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