どっきゅん♡LOVER


「一回だけだぞ」


……っ。

修平……。


ドクン、ドクン──。


頷いたあたしは、グッと唇を合わせる。

と一緒に、なぜか瞼にまで力が入った。


「沙弥、もっと力抜け」


修平が優しく、耳許で声を落とした。


「う、ん」


どうしよう、あたし緊張して……。


気づけばカチコチに強ばった身体。

火照った頬。

激しく音を鳴らす心臓。

自分から“して”ってお願いしたのに。


「あの……っ」


か弱い声が零れた時、修平がスッと撫でるようにあたしの頭に手を滑らせた。


「……っ!」


ああっ、だめ……っ。


ドキ、ドキ、ドキ、ドキ──。


だんだんと近づいてくる修平の顔に、無意識に息を止めてしまう。


「ちょっ、ちょっとだけ待って。今、心を──」

「待たない」


──え。



「……んっ」


ふわり、唇に温かいものが触れた。


今度ははっきりとわかる。

これは夢や幻なんかじゃない。


今、この瞬間。

あたしは修平と、キスしてるんだ……。


幸せ。


それはみるみるうちに、あたしの心を溶かしていった。



「行ってこい。頑張ってる姿、俺に見せてくれるんだろ?」


じっと見つめてくる瞳。


「うん……っ」


あたしは、笑って返事した。

< 147 / 274 >

この作品をシェア

pagetop