どっきゅん♡LOVER






「解散」


閉会式が終わり、全校生徒がバラバラと散らばっていく。


熱狂冷めやらぬグラウンドには、勝った嬉しさ、負けた悔しさ、次回への抱負。

それぞれに、思いのこもった声が混じり響く。


あれから、詰め寄ってきた女子たちは、一度もあたしの元へやって来なかった。

ということで、たぶんうまくごまかせたんだと思う。

ほんと、涼子ちんまなみんには感謝だ。



「南、意外とやるじゃん」


教室に戻った途端、あたしに近づいてきた矢野新がニヤリと言った。


「あんたもね」


同じくニヤリと返す。


あたしたちのチームは、優勝とはいかなかったものの、なんと準優勝だった。

自分で言うのもなんだけど、あたしも結構、勝利に貢献できたと思う。

そして、矢野新も。

悔しいけど、認めざるを得ないほどの大活躍をしていた。



「俺、実はお前のこと、運痴だと思ってたんだよ」


いやいや気づいてましたけど。

悪びれる様子もなく言う矢野新に、ムカムカとする。


でも。

まあいっか、見返すこともできたんだし。

そう思って今回は聞き流すことにした。


それより、あたしにはもっと大事なことがあったから。

< 169 / 274 >

この作品をシェア

pagetop