どっきゅん♡LOVER
一瞬、時が止まったみたいな感覚がした。
聞こえてきたのは、知らない男の声。
今、誰に言ったの……?
じっくり考えるまでもない。
あたしにだ。
だってここには、その人とあたししかいない。
「違いますけど」
振り向きながら、笑顔で言った。
っていっても、マスクにサングラス。
表情はほとんど見えないだろう。
そう──顔はほぼ見えない、はずなのに。
「嘘ついても無駄だよ? 俺、サーヤの大ファンだから。わかるんだよね」
「……」
痩身の男がニヤリ、口の端を片方上げて言った。
どうしよう。
言葉が、出てこない。
「嬉しいなあ……。ずっと会いたかったよ、サーヤ」
「っ!」
立ち上がって逃げようとした矢先、腕を掴まれ阻止された。