どっきゅん♡LOVER
「大丈夫か?」
足音が聞こえなくなった時、修平が、あたしの肩を持って心配そうな目をした。
「う、うん。ありが──」
気が抜けたあたしは、膝から崩れ落ちる。
それを、修平がサッとエスコートしてくれた。
帰り道、あたしは修平と並んで歩いていく。
念願だったはずのそれも、まださっきの恐怖が抜けなくて、素直に喜べない。
せっかく修平に会って、楽しくおしゃべりしようと思ったのに。
男の姿を思い出すだけでも、足が震えた。
「沙弥。なんでお前、俺の塾の前にいた」
無言のまま歩くあたしたち。
しばらく続いた静寂を切り割いたのは、そんな修平の声だった。
「お家デート、しようと思って……」
「お家デート?」
「うん。でも修平、家に行ってもいないし。菫子ちゃんから塾にいるって聞いて、それで」
「それで、ここまで来たってわけか」
ふぅ、と溜め息を落とした修平に、あたしは少し俯いてから頷く。
すると、修平が真面目な声で言った。
「もう、こんなことはするな」
──ズキン。
「またこんな目に遭うのは嫌だろ?」
──ズキン。
心臓が、押し潰されそうだった。