どっきゅん♡LOVER


矢野新。

あいつには本当、いつも悩まされている。


「メガネがどうの、名前がどうの、いっつもあたしに絡んでくるの」

「まさか、そいつに正体がバレたのか?」

「ううん。それはたぶん、大丈夫。なんとかごまかしてるから」


大丈夫……というか、大丈夫と思いたいって感じだけど。

そこはもう、信じるしかない。


「それより、聞いてよ」


──矢野新といえば。

忘れてたけど、たった今思い出した。

溜まった鬱憤を吐き出すように、勢いよく口を開く。


「この前の球技大会の時なんて、人を“運痴”呼ばわりして、馬鹿にしてきたのよ、アイツ!」


そう言って、あたしは

“ひどいでしょー?”

と、口を尖らせながら修平に近づいた。


すると。


「へぇ」


修平は、なぜか少し冷たい声で、小さく声を響かせた。

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