どっきゅん♡LOVER
『沙弥さん、お入りください』
到着した、社長室前。
日野っちが、少し哀しい目をしてそう言った。
『日野っちは?』
『私は、入らないようにと言われてます』
『そっか』
──そうしてあたしは今、社長室にいる、というわけだ。
「これはどういうことだね」
社長席に近づいて早々、あたしを見た社長が、小さな四角い紙を差し出して言った。
小さな四角い紙──それは、写真なのだとすぐにわかり。
瞬間、心臓が鈍い音を立てて跳ねた。
「……っ」
これ、兎月進学塾の近くの橋じゃ……。
その橋の上にいる、後ろ姿の男女ふたり。
紛れもない、修平とあたしだ。
何で……。
──まさかあの時。
修平の塾に押しかけたあの時、あたしに絡んできた男が……?