どっきゅん♡LOVER


「なっ何、矢野くん?」


素早く取り繕って、窓枠越しに廊下の彼に問いかける。


何であたしの席まで……。

わざわざ嫌味でも言いに来たっていうの?

笑顔を貼り付けながら頭を働かせていると、矢野新が窓の枠に寄りかかった。


「別に……。なんかお前、最近元気ないじゃん。だから」

「……え」



──キーンコーンカーンコーン。



その時、SHR開始5分前を告げる合図が、大きく鳴り響いた。


「……ま、あんま抱え込むなよ?」

「う、うん……」


かけられた意外な言葉に、あたしはポカンとする。

矢野新は、スタスタと教室へ入っていった。


「矢野くん、また南さんにちょっかい出してたのー?」

「そんなんじゃねーって」


その後ろ姿を、自然と目で追ってしまうあたし。


もしかしてあいつ、あたしのこと元気づけようとしてくれたの……?


ふとそう思った時、自分が嫌になった。


……あたし。

何やってるんだろう。

矢野新にまで心配されるなんて。


情けなさに押しつぶされそうになる。


そして、そんな感情が消えないまま。

いつしか5時間目の授業が終わっていた。

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