どっきゅん♡LOVER
いよいよ到着した社長室前。
ちゃんと社長に意思を伝えようと、気合を入れたものの。
「ちょっと待って」
あたしはある一つのことが引っかかって、ノックしかけた手をピタリ止める。
「あたし、アイドル辞めるの嫌だけど、修平と別れるのも嫌だよ」
そう。
流れのままに、ここに来ちゃったけど。
アイドルを辞めないってことは、同時に修平と別れることになるわけで……。
そうやって考えを巡らせている時。
「大丈夫です」
「その思いごと、全部ぶつけろ」
ふたつの、力強い声が降ってきた。
あたしは驚いて、素っ頓狂な顔をしてしまう。
「おも、い……?」
“アイドルも辞めたくないし、修平と別れることも嫌だ!”
そんなワガママなこと、言っていいのかな。
すぐに激怒した社長の顔が目に浮かんで、心に計り知れないほどの不安が渦巻く。
もしかしたら、怒られるだけじゃ済まないかもしれない。
事務所自体を辞めさせられる可能性だって、きっとあるのだ。
──だけど。
「できるな、沙弥?」
修平の、日野っちの、頼もしいふたりの顔を見たら。
「うん!」
頭には、頷く選択肢しかなかった。