どっきゅん♡LOVER


「ふざけたことを言うな!」


激しい怒号が室内に轟いた。


「わからないのか? アイドルにとって熱愛スキャンダルは一番の命取りなんだぞ!?」

「わかってます、でもっ!」

「でもじゃない!」

「……っ!」


ドン! と勢いよく振りかざされた拳が、大きく机を鳴らした。


瞬間、凍りつく身体。

間もなく、そんなあたしの耳に容赦ない言葉が飛び込んできた。


「……沙弥、君には失望したよ」


──ズキッ。


鋭い衝撃が走った。

胴体を巨大な針で一突きにされたような、耐えがたい痛みに襲われる。


どう、しよう……。


唇が動かない。

声が出ない。


何もできずに俯いてしまった時。


「日野、お前もなんとか言ったらどうだ」


静寂を埋めるように、社長が声を飛ばした。

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