どっきゅん♡LOVER
「騒動があってから今日まで。私は、沙弥さんの様子を黙って見ていました」
そんな言葉を皮切りに、日野っちはひとり淡々と語り出す。
「ただその期間、彼女はまるで別人だった」
別人……?
「あんなにつまらない“沙弥”を見たのは、正直初めてでしたよ」
「……っ」
「カメラを向けられた瞬間、誰もを惹きつける魅力を発揮する。それが、“沙弥”だった。……なのに」
思いもよらぬ発言に、唖然となった。
あたし、知らなかった。
そんなこと、日野っちが思ってたなんて……。
「なぜか……。考えなくてもすぐにわかりました」
「何だ」
「修平くんですよ」
社長が問いかけるや、間髪入れずに答えが飛んだ。
露骨に眉間にシワを寄せる社長。
返事を待たず、日野っちが切り込むように続ける。
「“沙弥”の笑顔には、修平くんの存在がなくてはならない……必要不可欠なのだと、思い知らされました。これまで見守ってきた私だからこそ、自信を持って断言できます」
「だが──」
「わかってください。“沙弥”から修平くんを奪うということは、同時に“沙弥”を殺すことになるんです!」
放たれた日野っちの力強い声が、室内に反響した。