どっきゅん♡LOVER






「遅い」


駐車場に着くと、案の定こっわーい顔した日野っちが車の前で立っていた。


「さあ、早く乗って」

「はーい」


あたしは日野っちに誘導されるまま、後部座席に乗り込む。


日野っちこと、日野康孝(ひの やすたか)。

彼はあたしが事務所に入った時からずっと、あたしのマネージャーをやってくれている。

それが、小学校6年の時だったから……もう4年の付き合いになるのか。


皺一つないスーツ姿。

いつも品の漂う、シルバーフレームのメガネをかけていて。

清潔感のある黒髪は、どんなに早い朝だろうときっちり整えられているから、ほんと恐ろしい。

もし寝グセなんかがついてたら、その日は間違いなく大嵐ね。


顔は……日野っちを見たまなみんが、『超ハンサムじゃん!』なんて言ってたけど。

あたしには、よくわかんない。

だって修平の方が、断然かっこいいんだもん。


お堅い日野っちとは、ぶつかることもしょっちゅう。

でも。

スケジュール管理とか、サポートとか。

いろいろ的確にやってくれるから、仕事の面では困ることなくて、とっても助かってるの。


「で、いったいどこで何をやってたんです?」

「日野っちには関係ないでしょー?」

「関係大ありです。20分には迎えに来ると言ったでしょう」


そうそう。

日野っちによる送り迎え。

これも、“条件”の一つなのよね。


寄り道禁止。

放課後は真っ直ぐ家に帰りなさい、だってさ。


「あなたにはこれから大事な仕事があるんですよ?」

「わかってるって」


日野っちの言う通り、このあとインタビューのお仕事があるため、今日はこのまま仕事場へ直行することになっていたのだ。


でも、お迎えの時間までちょっと余裕があったんだもん。

ちょこっとだけ修平の姿が見れたらなーって、そう思っちゃっただけ。



「......ま、大体の察しはつきますが」


むーと口をとがらせるあたしに、日野っちは呆れたように呟いた。


なーにが大体の察しはつく、よ。

あんたはなんでもわかるスーパーマンかっての。


「ねぇ日野っちー」


それならこの難題の答えを教えてよ。


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