どっきゅん♡LOVER


「おじゃまします!」


叫ぶように言って、ツカツカと大股で足を踏み入れる。

のとほぼ同時。


「あらぁ、沙弥ちゃんいらっしゃい」


なんて、笑顔で迎えてくれたのは、この家のおばちゃん。


あたしは「こんにちは」と会釈してから、さらに奥へと進んだ。


そして、リビングに到着したまさにその時。


いた!


黒革のソファーの上で一人、何やら本を片手に怪訝そうな顔をする、“彼”の姿を捉えた。


ここまで来れば、あとはもう簡単だ。


帽子とサングラスを取り、顔からマスクを剥がして、コートのポケットに全部突っ込む。


すうっ。

軽く息を整えて。

いざ!

あたしは“そこ”に狙いを定め、一気に詰め寄った。

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