どっきゅん♡LOVER
「失礼ね!」
日野っちのバカ野郎ー!
あたしにだって色気くらいあるわよ……!!
ぐぬぬ、と拳に力を込めて睨みつける。
そんなあたしを尻目に、日野っちは楽屋前に着くなり。
「じゃあ、私は先に駐車場の方へ」
と、何食わぬ顔で言い放った。
なんかムカつく……。
去りゆく後ろ姿に、べーッと舌を出す。
「あれ、沙弥ちゃんだよね?」
楽屋に入ろうと思った矢先のこと。
急に、後ろから誰かに呼びかけられた。
聞きなれない声。
誰だろうととっさに振り向く。
すると。
「会えて嬉しいよ」
目が合った瞬間、彼は爽やかにそう言って白い歯を見せた。