どっきゅん♡LOVER
「“市川歩武”とか、言わないよね……?」
そろりと訊ねる。
お願いだから、嘘でも違うと言ってー!
「その、まさかですよ」
いやぁーーー!
あたしは頭を抱える。
──はっ。
『3週間後の撮影では、どうかウチの沙弥をよろしくお願いします』
あの時日野っちが言ってたのは、そういう意味だったんだ!
「先ほど上から連絡があったんですよ。相手役が、市川さんに決まったと」
「あたし、あの人苦手なのに……」
思わず本音が洩れてしまう。
「相手が修平だったらなあ」
そしたらもう、最っ高に演じられる自信あるのに。
「なに馬鹿なことを言ってるんですか」
「いーでしょ、理想ぐらい語らせてよ」
ぶーぶーと文句を言うあたしに、「彼は一般人なんですよ」と、日野っちがとどめを刺した。