幸せの静寂

「幸せの静寂」

　私たちのバレーボールの最後の試合、全国中学校体育大会で相手のマッチポイント、私はサーブを失敗した。

そして静寂が訪れた。


　冬が終わり、春独特の暖かさが体を包み込んでくれるような季節。
　その日の授業を終え、私は菱川高校の第二体育館に来ていた。そこには、ボールが床に叩きつけられる音、キュキュッというシューズが床に擦れる音、様々な音が飛び交っていた。
「今日はマネージャーの見学に来てくれて、ありがとう。」そう言ってこっちに歩いてきたのは、この菱川高校の男子バレーボール部マネージャー、高校三年生の来栖(クルス)栗花落(ツユリ)先輩だ。来栖先輩はすごい美人だ。すごく。
「今で三十分たってるけど、どうかな？マネージャーやってみない？」
私の他には高校一年生の三人が見学に来ている。すると、そのうちの一人が答えた。
「ちょっと、無理ですかね…すみません。折角、誘ってくださったのに。」
「ううん。わざわざありがとね。」
来栖先輩がそういうと、三人は帰っていった。
すると、来栖先輩が此方を向いて言った。
「君はどうかな？」
私は少し迷った。あの時から私はバレーボールが出来なくなったから。でも、またここに違う形で戻ってきてしまった。だから、
「はい。やらせてください！」
と、こたえた。