幸せの静寂
1週間の仮入部が終わり、冬香は本格的にバレーボール部のマネージャーとして活動するようになった。
今は、放課後。続々と第二体育館に生徒が集まってきている。
「お願いしゃーす❗」そう言って入ってきたのは、巫君だ。巫君とはあの日以来、気間づい雰囲気になっている。多分、彼は繊細な人だ。だから、バレーボールに支障がでたらどうしようかと不安になっていたが、大丈夫なようだったので安心している。などと、考えごとをしていると、軌道がそれたボールがこちらに飛んできた。すると私は、ぼぼ条件反射でそのボールをレシーブ(相手がサーブしたボールを打ち返すこと)で返してしまった。
「あ…………」
「え…?」
(や、やらかしたぁぁぁ…)
私はもし、穴があったら埋まりたいなと考えていると、キャプテンの声で現実に引き戻された。
「え、あ、南雲さんって…バレーボールできるの?」
私は、腹を括って答えた。
「えと…はい…少し。」いざというときに、一歩踏み切れないのが私の悪いところだ。
「でもさ、今のレシーブって少しでできるようなもんじゃないよな。」そう言ってきたのは、猫田先輩だ。彼は、中学の時にベストリベロ賞をとっていた、天才リベロだ。
気が付くと、私の回りには皆が集まっていた。あの時の記憶が走馬灯のように頭の中に流れ込んだ。
やばい。息がうまくできない。あれ、息ってどうやるんだっけ。そう思ったときには、もう遅く、過呼吸を起こしていた。
「ど、どうした⁉大丈夫か⁉あ、おい、来栖!保健の先生を呼んでこい!」
「わ、分かった!」
皆が慌てることに忙しいなか、巫君が落ち着いた様子でこちらに来た。必死に過呼吸をおさめようとうずくまっている私の背中に手をあてて、さすってくれた。私は、それに合わせ呼吸をすると、段々と落ち着いてきた。
「落ち着いた?」
「…うん…ごめん……」まだ息苦しさが残るなか、なんとか答えた。すると、そこへ来栖先輩が保健の先生を連れて走ってきた。
その後、私は保健室のベットで親が迎えにくるまで、休ませてもらった。
練習が終わり、体育館の中の後片付けをしていると、猫田先輩が僕に話しかけてきた。
「なぁ、巫。お前、気づいたか?」
「何にです?」
「冬香ちゃんの右足首。多分、もう癖になってる思うけど、庇うようにして動いてただろ。」
「あぁ、何となく違和感はありましたね。」
・右足首に怪我をしている。
・バレーボールの経験者(しかも、かなり上手い)。
ここまで南雲さんの事が分かってくると、バレーボールをやっている人は、薄々気付いてくる。
「中学の時とかに、怪我をして、もうバレーボールをできない体になっちまったんだろうな。」
もう、バレーボールをできないということに。
体育館内の空気が少し重くなった時、一人の女性と一人の男性がやって来た。
「すみません。皆さんはバレーボール部ですか?」
「はい、そうですけど。どうかしましたか?」
扉にいちばん近くにいた部員が答えた。
「私は、冬香の母で、こっちが父です。冬香がいつもお世話になっています。」南雲さんのお母さんとお父さんは、優しい感じがした。きっと、大切にされているのだろう。
「あ!冬香ちゃんのご両親でしたか。」
「はい。この度は、迷惑を掛けてすみませんでした。」
「いえいえ、そんな!こちらにも、非があるわけですし…」
すると、南雲さんのお母さんが一呼吸おいて話した。
「皆さんに、お願いがあるんです。」
今は、放課後。続々と第二体育館に生徒が集まってきている。
「お願いしゃーす❗」そう言って入ってきたのは、巫君だ。巫君とはあの日以来、気間づい雰囲気になっている。多分、彼は繊細な人だ。だから、バレーボールに支障がでたらどうしようかと不安になっていたが、大丈夫なようだったので安心している。などと、考えごとをしていると、軌道がそれたボールがこちらに飛んできた。すると私は、ぼぼ条件反射でそのボールをレシーブ(相手がサーブしたボールを打ち返すこと)で返してしまった。
「あ…………」
「え…?」
(や、やらかしたぁぁぁ…)
私はもし、穴があったら埋まりたいなと考えていると、キャプテンの声で現実に引き戻された。
「え、あ、南雲さんって…バレーボールできるの?」
私は、腹を括って答えた。
「えと…はい…少し。」いざというときに、一歩踏み切れないのが私の悪いところだ。
「でもさ、今のレシーブって少しでできるようなもんじゃないよな。」そう言ってきたのは、猫田先輩だ。彼は、中学の時にベストリベロ賞をとっていた、天才リベロだ。
気が付くと、私の回りには皆が集まっていた。あの時の記憶が走馬灯のように頭の中に流れ込んだ。
やばい。息がうまくできない。あれ、息ってどうやるんだっけ。そう思ったときには、もう遅く、過呼吸を起こしていた。
「ど、どうした⁉大丈夫か⁉あ、おい、来栖!保健の先生を呼んでこい!」
「わ、分かった!」
皆が慌てることに忙しいなか、巫君が落ち着いた様子でこちらに来た。必死に過呼吸をおさめようとうずくまっている私の背中に手をあてて、さすってくれた。私は、それに合わせ呼吸をすると、段々と落ち着いてきた。
「落ち着いた?」
「…うん…ごめん……」まだ息苦しさが残るなか、なんとか答えた。すると、そこへ来栖先輩が保健の先生を連れて走ってきた。
その後、私は保健室のベットで親が迎えにくるまで、休ませてもらった。
練習が終わり、体育館の中の後片付けをしていると、猫田先輩が僕に話しかけてきた。
「なぁ、巫。お前、気づいたか?」
「何にです?」
「冬香ちゃんの右足首。多分、もう癖になってる思うけど、庇うようにして動いてただろ。」
「あぁ、何となく違和感はありましたね。」
・右足首に怪我をしている。
・バレーボールの経験者(しかも、かなり上手い)。
ここまで南雲さんの事が分かってくると、バレーボールをやっている人は、薄々気付いてくる。
「中学の時とかに、怪我をして、もうバレーボールをできない体になっちまったんだろうな。」
もう、バレーボールをできないということに。
体育館内の空気が少し重くなった時、一人の女性と一人の男性がやって来た。
「すみません。皆さんはバレーボール部ですか?」
「はい、そうですけど。どうかしましたか?」
扉にいちばん近くにいた部員が答えた。
「私は、冬香の母で、こっちが父です。冬香がいつもお世話になっています。」南雲さんのお母さんとお父さんは、優しい感じがした。きっと、大切にされているのだろう。
「あ!冬香ちゃんのご両親でしたか。」
「はい。この度は、迷惑を掛けてすみませんでした。」
「いえいえ、そんな!こちらにも、非があるわけですし…」
すると、南雲さんのお母さんが一呼吸おいて話した。
「皆さんに、お願いがあるんです。」