幸せの静寂
 私は、小学三年生の頃からバレーボールをすることが楽しくて楽しくて、たまらなかった。だから、中学校は中学の女子バレーボールの強豪校、桜並中学へと進学した。
 
 
 今日は、一週間あるクラブ体験の一日目。
 もちろん、私は女子バレーボール部を選んだ。そこには、凄い人たちがゴロゴロといた。強烈なスパイクやサーブを打つ人、どんなボールでも拾ってしまうリベロ、それぞれのスパイカーが打ちやすいようにボールを上げるセッター。これらは私に、女子バレーボールの強豪校に来たことを実感させた。今日は一日目だから見学だけで終わったが、明日からは体験として参加することもできるらしく、心が踊った。
 
 クラブ体験の二日目。
 今日は、私を含めて15人以上の生徒がいた。今はみんなでコートにネットを張っている。
「南雲冬香さんだよね?」突然、そう言って声をかけてきたのは同じクラスの早瀬真澄(ハヤセマスミ)さんだ。彼女も体験に来ていたらしい。
「うん。えっと…早瀬さん?」
「あはは!真澄でいいよ~」
「う…うん!」
彼女は太陽のような人だった。クラスではすでに人気者だ。
「冬香はバレーボール、したことあるの?」
「うん。小学三年生から。」
「凄っ。早いんだね~」
「えへへ…」
そこまで話したところで、集合がかかった。
「今から、ウォーミングアップをします。」
その言葉から始まったウォーミングアップはなかなかハードなものだった。そして、その後は経験者・未経験者に別れて練習をした。
「今日は、ここまでです。ただ、自主練をしたい人はこのまま残ることができます。」
私ちはまだ体験だからここまでだが、大抵の生徒は残っていた。私も少し、物足りなかったが残れないので帰ろうとすると、真澄が声をかけてきた。
「冬香!一緒に帰ろ~」そういって真澄の横にいた人たちと話しながらやって来た。
「え!?もう、友達できたの⁉」
「…さすが真澄」
「誉め言葉として受け取っとくよ!」
「えっと……」真澄と一緒にやってきたのは、一緒に体験を受けたいた人だ。
「あ、私たち真澄の友達。私が及川未稀(オイカワミキ)で、こっちが西宮碧(ニシミヤアオイ)。」
「あ、南雲冬香です。」
「よろしく、冬香!私ちのことも呼びすてでいいよ~」
「うん!」
「・・・西宮・・碧です。えっと、碧で・・・いいです。」
「うん。よろしく、碧!」

その日は、私を含めて四人で家へと帰った。未稀は少し不器用だけど優しい人。碧は少し控えめであんまり笑わないけど、笑ったらすっごく可愛い人。この日だけで良い友達が三人もできて嬉しかった。

 これからのクラブ体験はとても楽しかった。良い友達ができて、クラブ活動も楽しかったし、先輩からは筋がいいと誉められたりもした。クラブ体験が終わったあとも、私たちは正式に女子バレーボール部に入った。
 クラブに対して、私の学校生活も順調だった。真澄たち以外にも、たくさんの友達ができたし、勉強もそこそこ順調だった。
 
 そして、三学期のある日。この日は練習が終わると、皆に招集がかかった。
「えー、今日は重大発表があります。なんと、南雲さんのレギュラーいりが決まりました❗」そのキャプテンの言葉に皆が拍手をしていたが、私はなんにも頭に入ってこなかった。強豪校では、レギュラー入りをしているのは大抵、ニ・三年生だ。そのなかで、一年が選ばれることはなかなかないのだ。
「え?は?え?えぇ⁉私がですか⁉」
「うん。南雲さんはボールのコントロール力にすっっごい優れてるし、最近はそれにスピードも加わってきてるでしょ?詳しいけど、もうとっくに合格点だよ。」私は思わず真澄たちを見た。すると、彼女たちは微笑んでいたからこのことは知っていたのだろう。
 
 今日も真澄たちと家へ帰る途中、私は気になっていたことを聞いた。
「私のレギュラー入り知ってたの?」
「うん。キャプテンから言われて、皆で驚かそうってなったから。」
それを聞いて、私は嬉しくなった。
「私たちもすぐに冬香においくつからね!」
「うん!」
「…私も…っ」碧がここまで声を出したところを見たのははじめてだ。それだけ、バレーボールが好きなのだろう。
「よーしっ!じゃぁ、皆で円陣組もうよ!」
 真澄がそう言うと皆が手を重ねたため、真澄は驚いた顔をしていた。
「そう言うと思ったよ。」と、未稀が言うと真澄は顔を輝かせた。
「さすが皆だね。分かってらっしゃる!よーし、じゃあ気を取り直して…頑張るぞぉ❗」 
「おぉ❗」 


 


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