再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
「紗菜美?」


瑠花が私の顔を覗き込んできて、我に返る。

込み上げてくる怒りを沈め、口の中をクリアにして笑顔を作る。


「ふーん、そっか。瀬戸さんもやるね、あんな美人捕まえてさ。ってことは、もしかして瀬戸さんって次期社長候補なのかな? それならそうと言ってくれれば、ゴマもたくさん擦っちゃうのにね!」


嫌な気持ちを笑い飛ばし、胸につっかえているものを流すようにお茶を注ぎ込んでいると、瑠花がため息とともに「やっぱり気のせいじゃなかったわね」と溢した。


「紗菜美、最近おかしくない?」

「え?」

「慣れない環境で少し疲れてるのかなと思ってたけど、それだけじゃないでしょ? 瀬戸さんが関係してるんじゃない?」


瑠花の言葉に、心臓が音をたてる。


「最初に紗菜美から瀬戸さんのことを聞いたときはふたりの距離がすごく近い感じがしてたのに実際はそんな感じがしないし、特に最近の紗菜美はなんとなくだけど瀬戸さんに対してだけよそよそしく見える。瀬戸さんだって紗菜美のこと」

「やだ、よそよそしいなんてそんなことないよ。仕事相手としてちゃんと接してるでしょ。瀬戸さんも忙しい人だから気軽に話しかけないほうがいいだろうし、これが普通だよ」

「それなら、どうして今の紗菜美はそんな顔してるの?」

「……そんな顔?」


瑠花の言葉の意味がわからなくて首を傾げる。

一体私はどんな顔をしているというのだろう。
 
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