再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
4.黒王子が意外と甘かった件。
01
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もうずっと、航くんのことが頭から離れない。
恋人を裏切るような酷い人のことなんか考えたくないのに、気を抜けばすぐに考えてしまう。
そんな毎日を過ごしながら迎えた、金曜日の朝。
今日は航くんが戻ってくる日だ。
彼がいなかったこの1週間、何事もなく私なりにしっかり仕事をこなしたつもりだ。
だから、航くんとも以前と同じように顔を合わせればいい。
何も特別なことはないと、落ち着かない気持ちに気づかないふりをして私は出社した。
午前の業務が始まり、私は昨日の夕方に届いたばかりの複数メーカーの照明パンフレットの整理をしていた。
新商品がたくさんあり、つい見入ってしまいそうになるのを抑えながら作業を進める。
おおよそ作業を終えたとき、企画営業の永嶋(ながしま)さんが私のデスクにやってきた。
永嶋さんは私よりも10ほど上のやり手の先輩だ。
「今週の頭に発注を頼んだ照明だけど、あかり照明のAC0907を5ケースを間違いなく発注したよな?」
「ショッピングモールの雑貨屋さんの照明ですよね?」
「そう」
パソコンに向かい、確認する。
「えっと……発注したのは、あかり照明のAC0901を5ケースで……あの、907、ですか?」
「やっぱりな。商品が違うっていう連絡がきたんだよ」
「えっ?」
「依頼したのはデザイン違いのAC0907だ。901じゃない。はぁ。まったく、参ったな」
永嶋さんが呆れたように眉間にシワを寄せ、大きく息をつく。
ミスをしてしまったことに気づき、一気に血の気が引いた。