再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「すみませんっ……」
「謝られても状況は変わらないんだよ」
どうしてそんなことになってしまったのかと、私は焦る気持ちを抑えながら、そのときのことを思い出す。
あの日は朝一に永嶋さんから見積書依頼の電話がかかってきた。
オフィスには現時点での図面は置いていないということだったので、パソコンのサーバーに上がっている途中段階の資料を確認し、永嶋さんに指定された照明なら空間を素敵なものにできるだろうと思い、見積書を作った。
その後、メールで見積書の内容確認を行い、しばらくしてから見積書の内容で発注するように依頼された。
発注書は見積書の内容をそのままデータとして使うため、間違えることはないに等しい。
実際、パソコンに残っている見積書と発注書は同じ内容だ。
じゃあ、どこでミスが起こったの……?
考えを巡らせたとき、あることに気づいた。
今、永嶋さんは「きゅうぜろしち」と言った。
私はそれを「きゅうぜろいち」と聞き間違えたのだ。
つまり、私の聞き間違いと永嶋さんの確認ミスが起こしたことになる。
とはいえ、実際に発注をかけた私の責任が大きい。
間違えた商品を返品することはできるだろうけど、このままだと正しい商品が届くまで永嶋さんの案件が滞ってしまう。
メーカー側に在庫がなければ、下手すれば数週間待つ必要も出てきかねない。
今はそちらのほうが問題だ。すぐに対応しなければいけない。
「正しい商品を今すぐ確認します!」
「困るんだよね。こういうミスをされると!」
「本当にすみません!」
永嶋さんの気迫に私は慌てて立ち上がり、頭を下げる。
「こっちに異動して少し経って慣れてきたから、気持ちが緩んでるんじゃないのか? わかるよな。オレたちの仕事はミスをすればクライアントにも迷惑をかけるんだ。しっかりしてくれよ。今すぐ、正しい商品をいつ取り寄せられるか確認して。現場やクライアントにも説明に行くから、確認できたらすぐに連絡して」
「はい! わかりました!」
100%私の責任になっているようで弁明したいと思ったけれど、今は責任の押しつけ合いをしても仕方ない。
私はすぐに確認作業に取りかかった。