再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
反射的に声の方を振り向くと、そこには1週間ぶりの航くんの姿があった。
胸が締めつけられるような感覚に襲われながら彼の姿を見てしまっていると、彼がデスクにたどり着く数歩手前で目が合った。
我に返り、慌てて頭を下げる。
「あっ、お、お疲れ様です!」
「……お疲れ様」
航くんはデスクの足元に荷物を置きながら怪訝な表情で私を見ていて、私は慌てて顔をそらした。
今はぼんやりしている暇なんてないのに、どうして航くんの姿を見ただけで泣きそうになっているの。
込み上げてくるものを抑え、発注書の控えと手帳、ペンを手にしたとき、航くんが話しかけてきた。
「梶原さん」
「はいっ?」
「俺がいない間、何も問題はなかった?」
「えっ? あ、あの……」
まさに問題があったところで、私は慌ててしまった。
でもさっきのミスは航くんの仕事には関係のないことで、私が解決しないといけないことだ。
迷惑をかけてはいけない。
「は? 何、変な顔してるんだよ」
「いえ、なんでもありません。すみません、私急いでるので」
「待てって。なんでもないって顔じゃないだろ。ん? なんだよ、その紙」
「あっ」
航くんは私の手から書類を抜き取り視線を落とすと、眉間に皺を寄せた。
「どうして月曜日に出した発注書持ってるんだよ。急ぎって何」
「あのっ、これはっ……」
「何かあったんだな? ちゃんと言え」
まっすぐ見てくる航くんの視線から逃げることはできなかった。
永嶋さんの案件で発注ミスをしてしまったことを伝えると、航くんが大きく息をついた。
「何やってるんだよ。仕方ないやつだな」
「すみません……」
まるで役立たずと言われているようで、心臓が締めつけられるように痛む。
彼らの役に立ちたいと思っているのに逆に足を引っ張ってしまうなんて、アシスタント失格だ。