再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
「これ、本当にお前だけのミスか?」

「……え?」

「昔からこういうの、間違えないだろうが。変なところだけは記憶力いいし、無駄に石橋を叩く性格だろ。そのせいで壊すこともあるけどな」

「あの」

「あぁ、わかった。永嶋さんの確認漏れもあったってところか。ただミスはミスだから、今後はこういうことが起こらないように対策は立てておけよ」

「……はい。承知しました」

「で、これ、どの照明?」

「え?」

「この照明が載ってるカタログ、あるか?」

「あっ、はい」


あっという間に話を進めていく航くんについていけないまま、言われた通りにデスクに持ってきておいたカタログを航くんに差し出すと、彼はカタログをめくり始めた。


「これ?」

「はい」

「ちゃんと案件も確認したんだよな」

「はい。……私はいいと思ったんですけど」

「ふーん」


つい言い訳を口にしてしまったけれど、航くんは頷くだけで何も言わない。

呆れているのだろう。

考えるしぐさをした彼は視線を上げないまま、口を開く。


「これ、まだ返品するって連絡はしてないんだよな」

「はい。まずは最優先で必要なものを手配しないといけないと思ったので、今から連絡します」

「わかった。じゃあ、遠慮なく使えるってことだな。ちょうどいい案件がある。奇跡だな」

「えっ?」

「俺好みのデザインだし、きっと気に入ってもらえる。いいものを見つけてくれて、感謝するよ。無駄にはしないから安心しろ」

「あの……」

「棚からぼたもち……いや、それ以上だな。メーカーには俺から連絡を入れておく。必要な作業はまた後で言うから、そのときに作業よろしく」

「あ、はい……」


航くんが楽しげに口元に笑みを浮かべて話を進めていくのを呆然と見つめる。

つまり、照明は無駄にはならずに、使われるべきところで使われるということ……?
 
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