再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
本当にそんな都合のいいことがあるのだろうかと思っていると、航くんがクリアファイルに入った資料を差し出してきた。


「提案前の段階のものだけど、案件はこれだから確認しておいて。ミスで先方に届いた照明は一旦うちの倉庫に戻してもらったらいい。その辺りのやり方は光石さんがわかると思うから聞いてみて」

「わかりました……」

「あと、これ。返しとく」

「えっ? ……あれっ、どうして」


航くんが渡してきたのはなくしたと思っていたお気に入りのペンだった。

なくしたことに気づいたあの後も家を含めて探してみたけれど、見つからなかったから諦めていた。

どうして航くんが持っているのだろうか。

聞こうと思ったけれどすでに航くんはデスクに姿はなく、他の企画営業の人のデスクで話を始めていた。

社内のどこかで見つけてくれたのかな?

いやでも、「返しとく」って言ったよね……。

ということはいつか貸したんだっけ?

記憶を遡ってみるものの、疑問の答えを見つけることはできなかった。

とにもかくにも、自分の手元に戻ってきたということだけで十分だ。

あんなに気持ちが落ちていたのに、単純にも力が少し戻ってきた気がした。
 
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