再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
でもその手はすぐに彼に掴まれ、彼のぬくもりを感じてまた涙が出てくる。
「落ち着けよ。結婚って何の話? 別に結衣とは何もないんだけど」
「瑠花にそういう話があるって聞いたの! それに、すごく仲良さそうだったじゃない……。イタリアでも休みのときもずっと藤岡さんと一緒だったって、航くんが言ったんだよ」
私の訴えに航くんは小さく息をつく。
「結衣の話をした後になんか様子がおかしかったのはそれが理由だったのか。言っておくけど、イタリアで一緒に動いてた人間は他にもいるからな。四六時中、ふたりでいたわけじゃない」
「……え?」
「結衣には海外事業部に恋人がいるんだよ。今回の仕事はそいつも一緒で、半分以上は3人で動いてた。フリーの時間になってやっとひとりになれると思ってたら、ふたりに呼び出されて無理やり付き合わされたんだ。その上、目も当てられないくらいいちゃついてて本当にうんざりだった。あぁ、そういえばそのときに勝手に撮られて送りつけられた写真があるけど、見るか?」
自分からすすんで写真があると言うくらいだから、本当なのだろう。
航くんはバレバレのリスクをおかすような性格をしていないことは重々承知だ。
私は首を横に振る。
「ううん、見なくていい……。信じる、から……」
航くんと藤岡さんは結婚しないんだ……。
ホッとして、航くんにぶつけたままだった手を離そうとするけれど、その手を彼に掴まれていて動けない。
「紗菜、教えろよ。どうしてそんなふうに泣くほど、結衣のことが気になってたんだよ」
私の心を暴く質問をされ、私は肩を震わせた。
答えはもうほぼ頭に浮かんでしまっているけれど、表に出すことができるほど覚悟はできていない。
「……別に、気になってたわけじゃ……」
うつむき、下唇を噛みしめる。