再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「本当に藤岡さんとは何もないの? あんなに綺麗で素敵な人なんだよ? あんなに近くにいて、好きにならないわけないのに」
「結衣にはちゃんと彼氏がいるって言っただろ? あいつとは同期入社だし仕事のセンスも合うから仲はいいけど、恋愛感情が湧いたことは一度もない」
「ほんと? 嘘ついてない? ……信じてもいいの?」
「バカ。嘘なんかつくかよ。紗菜に再会してすぐはつい翼のふりをしたこともあったけど、それ以外に紗菜に対して偽ったことはひとつもない。俺のことを信じろ」
強い瞳が私を映す。
航くんはいつも強引で意地悪で考えていることも全然わからなくて、私は彼にたくさん振り回されてきた。
でも彼の気持ちを聞いて思い返してみれば、その中には私のことを考えてくれているような言葉や好きの裏返しのような行動や言葉がたくさんあったし、最近では彼のわかりにくい優しさや仕事に対する想いやまっすぐさに惹かれていた。
航くんと以前のように話さなくなったことが寂しかったのも、あのキスをいつまでも忘れることができなかったのも、理由は簡単なこと。
……航くんのことが好きだからだ。
自分の心を素直に認めてしまえば、今まで重く感じていた心のモヤモヤがなくなって軽くなった気がした。
それと同時に湧き上がるのは彼に対するあたたかい気持ち。
航くんのことを信じて自分にも素直になろうと、気持ちを整えるように息を吸い、口をゆっくり開く。
「……うん、わかった。航くんのこと、信じるね」
「あぁ」
航くんは頷き安堵した様子を見せるだけで、それ以上は何も言わない。
きっと私の次の言葉を待ってくれているのだろうけど、そのことが私を焦らせる。
「……えっと、あの……ちょっと、待って……」
目をそらさずに私のことを見つめる航くんの視線から逃げるように、私はうつむく。
航くんは小さい頃から知っている上、今まで言い合いばかりしてきた相手だ。
自分の気持ちを伝えるのはすごく照れ臭い。
航くんはどういう想いで私に気持ちを伝えてくれたのかな。