再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「えっ……?」
突然航くんに突き放され、思わず声を出してしまう。
もしかして本当はからかわれていたのだろうかと不安になりながら航くんのことを見つめていると、彼は意地悪な笑みを浮かべた。
「バーカ。そんな不安そうな顔するなよ」
「だって……」
「さっき約束しただろ? 本音を言ったら離してやるって。まぁでも、もう離さないからな」
「ひゃっ?」
腕を引かれ、強く抱きしめられる。
「やっと俺のものになったな。鈍感紗菜。俺のよさに気づくのが遅いんだよ」
「航く、んっ……」
身体が少しだけ離され、航くんの嬉しそうな笑みが見えた瞬間、唇を塞がれた。
突然のキスに一瞬戸惑って彼の胸を押し返そうとしてしまったけれど、すぐに力が抜ける。
初めて航くんとしたキスよりもずっと、ぬくもりとやわらかさを感じる。
そして、愛情も。
もっと航くんの熱を感じたくて彼の首裏に腕を伸ばして抱きつくと、彼は私の腰に手を添えて身体をしっかり支えてくれた。
溶けてしまいそうなキスに鼻から抜けるような声や吐息が漏れてしまい、それがまた身体を熱くしていく。
……こんなに気持ちよくて、相手の想いが伝わってくるキスは初めてだった。
互いの熱を思う存分確かめ合った後、自然と唇が離れ、航くんがふっと笑みをこぼす。
「気持ちよさそうな顔してるな。キス、好き?」
「そんなの、考えたことない……」
「ふーん。じゃあ、好きにさせてやるよ。ただし……俺の、限定だからな」
頬と耳に航くんの手が触れ、親指が私の唇の形を確かめるように動く。
私の唇に視線を落とす航くんの瞳がセクシーで、また身体の熱が上がった。
「……うん。航くんも、私の限定だからね」
「当たり前だろ。一生、紗菜だけだ」
「一生なんて言っちゃっていいの? 大袈裟すぎない?」
「離す気ないんだからいいんだよ」
「やだ、それって束縛ってやつ? 怖い!」
「黙れ」
くすくすと笑いながら航くんと私はどちらともなくゆっくり唇を寄せ、触れ合わせる。
さっきとは違ってじゃれあうような触れるだけのキスなのに、航くんのことが好きだという気持ちとともに幸せな気持ちが降り積もっていく感じがする。
私はこんなにも彼に触れたいと思っていたんだと新たな発見をしながら、本当に恋人同士になったんだと実感した。