再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
慌ててスマホを手に取り画面を見ると、航くんだった。

いつものテンションで電話に出る。


「もしもし、航くん?」

「あぁ、起きてたな。10分待ってやるから、着替えて外に出てこい」

「は!?」

「時間厳守な」

「ちょっと……」


あまりの強引さに噛みつこうとしたときにはすでに、スマホからは電話の切れた音がしていた。


「~~もうっ、なんなの!」


私の記憶が確かなら、昨日、航くんと“恋人同士”というものになったはずだ。

告白されたことも、告白したことも、キスをしたことも、はっきり覚えている。

それなのに、この扱いはなんなの!? 前と何も変わってない!

昨日は今まで聞いたことのないような甘い言葉を言ってくれたし、彼女になれば少しは優しくしてくれるだろうと思っていたのに、期待した私が甘すぎたのかもしれない。

……なんて、怒りたい気持ちは少なからずある。

でも今はそれ以上に、航くんに会いたくて仕方ない。

自分の気持ちを認めてしまえばこんなにも素直になれるのが恋なんだ。

ベッドから抜け出した私は、パンをかじりながらクローゼットで服を選び、歯を磨いて顔を洗って、着替えて、メイクをする。

休日仕様のオシャレなファッションやメイクができればいいけれど、私はそんな女子力の高い技術は持ち合わせていないから、持っている力を出すことに専念する。

好きな人に会いに行くときってこんなふうにウキウキするものだったなと鼻歌を歌いながら準備を終え、私は家を出た。
 
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