再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「……翼くん? どうしたの」
「紗菜ちゃんはさ、“初恋の人”に再会して運命感じてるって言いたいんだよな?」
「えっ?」
どうして、私の“初恋の人”が翼くんだって知ってるの!?
確かに昔は翼くんに「大好き」と何度も言っていたから気づかれていたかもしれないけれど、こんなふうに言われるなんて……。
想像もしていなかった状況に、私は動揺する。
「ロマンチックな展開が起こればいいのに、って思ってるんだ?」
「翼くん? あの……、っ!?」
私の頬に翼くんのぬくもりが触れ、私は肩を震わせて動けなくなった。
笑みの消えた翼くんの表情が私の目に映る。
まっすぐ私を捕らえる視線に鼓動が走り出し、全身が心臓になってしまったかのように血液が身体中を駆け巡る。
10年という月日がこんなにも男の人を大人っぽく魅惑的にすることを、私はこのとき、はじめて知った。
「……紗菜」
「っ」
聞き慣れている自分の名前なのに、息が止まりそうなほどの衝撃が私を襲う。
翼くんは昔から私のことを「紗菜ちゃん」と呼んでいて、現にさっきまでもそうだった。
それなのに、私の全身を熱くするような表情と甘すぎる低音の声で名前を呼び捨てされて、平静でいられるわけがない。
すっかり大人の男に変貌した翼くんに、私はもう、陥落寸前だった。
「紗菜。俺のこと、ちゃんと見て」
「翼く……、っ!」
私が名前を呼んだ途端、翼くんは私に顔を近づけ始めた。
その行動が示すことは、私にはひとつしか思い浮かばなかった。
うそっ……、これって、き、キスっ、されるの……!?
唇が触れる、と思い、目を強く閉じた瞬間だった。