再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
マンションの外に出ると、私の気持ちを表すような透き通るような青空が広がっている。
鮮やかな緑を揺らす風が気持ちよく、外で元気に遊ぶ子どもたちの声が耳心地いい。
パーキングに停まっている航くんの車に足取り軽く近づいて助手席の窓を指で軽く叩くと、航くんは「入れ」とジェスチャーしてくれた。
助手席のドアを開け、乗り込みながら口を開く。
「もうっ、急になんなの!」
「朝からぴーちくうるさい。迎えに来てやったんだから文句言うな。っていうか15分も遅刻したんだから、ペナルティーだからな」
「何それ! これでも頑張って用意してきたのに酷い!」
「もたもたしてたんだろうが。ほら、いつもより化粧濃くないか? 無駄なことするなって言ってんのに」
航くんが私の顔を覗き込んできて、マジマジと見つめてくる。
確かにメイクはいつもよりもちょっとだけ頑張ってみたけれど、文句を言われるほど濃くしたつもりはない。
頬を膨らませ、航くんを睨みつける。
「あっ、また全女子を敵に回すような発言! 私の頑張りを認めてよ!」
「どうせそんなに変わらないんだし、そのままでいいって言ってるんだよ」
「そのままでいてほしいの?」
「化粧まみれよりはマシだからな。着飾らなくても紗菜はそのままで十分だ」
女子を敵に回すような発言であることは間違いないけれど、航くんなりに私らしくいてほしいと言ってくれているのだろう。
そう思えば嬉しくて、頬が緩む。
「へぇ、そっかぁ。航くんのためにお化粧頑張ったんだけど、仕方ないなぁ」
「俺のため? ふーん、あっそ」
航くんの手が私の手に絡む。
「紗菜、にやけてる」
「航くんこそ、にやけてるよ? 嬉しいの?」
「バーカ。にやけてないし。嬉しいと思ってるのはお前のほうだろ」
「んっ」
後頭部に手を回され、航くんの唇が私の唇に軽く触れる。
少し大人っぽい口紅を塗るか悩んだけれど、淡く色がつく程度の取れにくいリップを塗っておいて正解だったな、なんて思いながら、「リップついちゃったかな」と航くんの唇を指で軽く拭ってあげた。