再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
そんなバカップルにも負けないようなやりとりをした後、どこに連れていってくれるのか期待していた私を裏切るように、“荷物持ち”という名目でスーパーでの買い物に付き合わされた。
あまりにも庶民的すぎる場所に文句を言いながら連れてこられたのが、航くんの住むマンションだ。
企画営業部の歓迎会のときに航くんは私と家が同じ方向だと言っていたけれど、確かに大まかに見れば同じ方向でも、ついでに送ると言えるほど近くもなかった。
そのことを突っ込むと、「お前が無防備なのが悪い」と答えになっていない答えでなぜか私のせいにされた。
素直に「好きな女を守りたかったから」と言ってくれたら嬉しいのになと思いながらも、彼が認めるとも思えないので、とりあえず彼の言い分で納得してあげた。
部屋に入るとすぐ、買ってきた食材を冷蔵庫や棚にしまい始める。
私は先に傷みやすい食材を袋から出し、航くんに渡していく。
「初めてのデートなのに、いきなりおうちデートなの? ちょっとくらい初々しい恋人みたいなことしようよ!」
「お前な、俺、昨日日本に帰ってきたばっかりなんだよ。時差ボケがきついっての。ゆっくりさせろよ」
「あっ、そうだったね。忘れてた。ごめんごめん」
「まったく」
謝りながら笑い飛ばす私に、航くんは冷蔵庫に食材をしまいながら呆れたような視線を飛ばしてきた。
こんな表情を見せているけれど、わざわざ強引に迎えに来たということは、私に会いたいと思ってくれていた証拠だ。
彼が想像以上に私のことを想ってくれていることが感じられて、すごく嬉しい。
「そのうちどっか連れていってやるから、今日は我慢しろよ」
「はーい」
袋の中身を出しながらキッチンやそこから見えるリビングに目線を移す。
予想していたよりも整えられていて、全体的にシンプルだ。
さすが空間を作る仕事をしているだけあってセンスがよく、航くんらしさで溢れている。