再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
目線をキッチンに戻すと洗い立ての食器があり、ゴミが散らかっている様子もない。

昨日帰ってきたばかりだから整頓されているのは当然なのかもしれないけれど、部屋に入ってすぐにお湯を沸かしていたし、買い物での食材のチョイスも慣れているようだった。

航くんは意外とちゃんと料理をするタイプなのかもしれない。


「航くんって普段からちゃんと自炊してるの?」

「あぁ。一人暮らし歴長いからな。海外でずっと外食ってわけにもいかなかったし、元々料理するの好きだし」

「えっ、料理するのが好きなんて意外! 無駄に外食ばっかりの生活じゃないんだね」

「そういう紗菜はどうなんだよ」


沸いたお湯でこれまた意外にもフレーバーティーをいれながら、航くんがイタイ質問を投げかけてくる。


「んー……、上手ではないけど、たぶん普通、かな」

「胃薬用意しとけってことな」

「あっ、酷い! そんなこと言ってたら作ってあげないからね!」

「そう言いながら、紗菜のことだしそのうち作ってくれるんだろ? 楽しみにしとく」

「作らないってば!」

「はいはい。ほら、そっち運んで」

「……はーい」


フレーバーティーの入ったカップがふたつと、さっきの買い物で私がチョイスしたお菓子がのったお盆を渡され、リビングに促される。

意地悪なことを言いながらもキッチンを使ってもいいという暗黙の許可をくれたことに、彼女の称号をもらえたみたいで頬が緩んだ。
 
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