再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
「もうっ。からかうなんて酷い!」
「からかってないし。続きは後でのお楽しみってだけだろ」
航くんはドキリとさせることを軽く言い、そのままカップを手に取ってフレーバーティーを飲んだ。
「ほら、紗菜も飲めよ。少し冷めたから紗菜も飲めるだろ」
「……うん」
くすぶる熱を感じながら身体を起こし、私もカップを手に取って照れを隠すように香りを楽しむ。
「わ。これ、いい香りだね。柑橘系?」
「ベルガモット。イタリアで買ってきた」
「航くん、紅茶のこと詳しいの?」
「いや、そんなに詳しくないけど、イタリアと言えばベルガモットだって結衣がうるさくて、押しつけられるまま買わされただけ」
「えっ、航くんに買わせるなんて藤岡さん強い! いつも大人の女性って雰囲気だし、穏やかな人だと思ってた」
「見かけに騙されるなよ。会社では猫かぶってるけど、あいつ負けん気強いからな。だからこそ真正面からやりあえる」
「そうなんだ」
意外な一面が見えて、遠い存在だと思っていた藤岡さんが少し近く感じた。
立場は全く違うけれど、彼女も私と同じ普通の女の子なんだ。
この航くんがこんなに信頼していて、彼と対等に接する彼女と話してみたくなった。
真正面からやりあえるということはきっと本性を見せているということだし、もしかしたら話も合うかもしれない。