再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
まったりした時間を過ごしていても航くんと一緒にいると楽しくて、時間が流れるのが早い。
あっという間に1日が過ぎていき、今目の前に並ぶのはこれまた航くんが作ってくれた夕食だ。
一応断っておくと、私もお米をといだり野菜を切るといった簡単なお手伝いはした。
とはいえ、ほとんど航くんがひとりで手際よく作っていったものだ。
香ばしい香りのするデミグラスソースがかかったハンバーグとライス、コールスローサラダ、たっぷりの野菜が入ったコンソメスープを見ながら、どこか店に来ている感覚になる。
「なんなの……プロ?」
「大袈裟だろ。冷めないうちに食えよ。いただきます」
「いただきまーす……」
航くんはご飯を食べる前に挨拶をすることも忘れない。
こんな小さいところを気にしてしまうのは子どもっぽいかもしれないけれど、私にとっては好感度が上がる重要ポイントだったりする。
ご両親の教育もあってか、彼の礼儀正しいところは昔からで、意地悪なことをされていても航くんを完全に憎みきれなかった理由もここにある。
……今となっては、あんなに嫌だと思っていた彼の意地悪すら、愛情表現だと思ってしまうくらいになっているけれど。
ハンバーグを口に運ぶと、肉汁が口の中で広がった。
ジューシーですごくおいしい。
「……く~っ、胃袋つかまれるー!」
「は?」
「航くんって、何でもできてほんとズルいよね。私も航くんのどこかをわしづかみにしたい!」
「……下ネタかよ」
「やだっ、どうしてそうなるの! こんなにおいしいご飯作ってもらっちゃったから、今度は私が航くんを喜ばせることしなきゃだね。何かリクエストある? ……ん~、おいしい~」
問いかけながら次はコンソメスープをすすると、これまた息をついてしまうほどの絶品だった。
黒胡椒がきいていて、いくら食べても飽きないおいしさだ。
スープを堪能しながら航くんの答えを待っていると、彼はお茶を飲みながら興味なさそうに答えた。
「考えとく」
「えっ、せっかく一肌脱いであげようと思ったのに。そうだなぁ……じゃあ、今日のところはこの片付け、私がしてもいい? 簡単なことしかできないけど」
「いや、助かる。よろしく」
早速キッチンを任せてくれることに嬉しさを感じた。
その後も料理のおいしさを語ったりレシピを教えてもらったりしながら、目の前に並んでいた料理は全て、私と航くんのお腹の中におさまっていった。