再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
女の子は私。そして、男の子は……。
「……これ、航くん!?」
「笑えるだろ。いつだったか母さんが嬉々として送りつけてきたこと、すっかり忘れてた」
「やだ、かわいい! 航くんのお母さん、いい仕事する!」
自分で言うのもあれだけど、写真の中の私たちはまるで絵本に出てくる主人公と言ってもいいくらいのかわいさだ。
写真の私は3歳くらいということもあり、頬とはいえ、航くんにキスをしたことがあったなんて記憶は全くない。
このふたりが20年以上経ってからこうやって一緒に過ごしているなんて、すごくロマンチックだ。
無性に航くんを感じたくなって、私は甘えるように彼の腕に自分の腕を絡ませて寄りかかる。
「この写真、初めて見たよ。もしかして航くんの実家に他にも見たことのない写真があるのかな?」
「さぁ。あるかもな」
「えー、見てみたい! 悪ガキ航くんも見たいし、小さい頃の私も結構かわいかったなって自負してるし、ほら、カッコいい翼くんも見れるし!」
「なんで俺が“悪ガキ”で翼が“カッコいい”になるんだよ」
「本当のことでしょ?」
「却下。これ以上は絶対に見せない」
「航くんのケチ! まぁでも、んっ……」
“この写真だけでも見れたことが嬉しいな”と言おうとしたとき、航くんの唇がそれを制した。
すぐに唇は離れ、不機嫌そうな顔をして彼が私の目をまっすぐ見てくる。
「紗菜は今の俺だけを見とけばいいんだよ」
「……もしかして、妬いちゃった?」
「うるさい」
反応を見る限り、どうやら私が翼くんの名前を出したことがおもしろくなかったらしい。
そんなの、気にしなくてもいいのにな。
ヤキモチ焼きの彼の腕にさらに強く抱きつき、顔を寄せる。
「大丈夫だよ。私、航くんのことしか見てないから。……ねぇ、航くん」
「……何」
「私、すぐに航くんに追いつくからね」
「ん?」
「航くんのことを好きだって気づいてからあまり時間は経ってないし、たぶんまだ気持ちの大きさも航くんに追いついてないけど、猛スピードで大きくなってるから」
「のろま紗菜だもんな。期待はしてない」
「あっ、酷い」
意地悪なことを言う航くんを見上げると、彼は笑みをこぼした。
「待つ気はないから、早く追いつけよ」
「うん。……航くん、大好きだよ」
「……あぁ、わかってる」
航くんは腕に絡んでいた私の腕をほどき、私を包み込むように抱きしめてくれる。