再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
「……いったぁ! なっ、何!?」


キスされると思っていた私を襲ったのは、頬をつねられた痛みだった。

予想外の出来事に目を開けると、そこには眉間に皺を寄せて機嫌の悪そうな表情に変貌した翼くんがいた。

今日再会してからほんの数秒前までに見せていたものとは全く違う雰囲気と表情を、私は呆然と見つめる。


「おい。まだ気づかないのか? この鈍感女。俺のことをちゃんと見ろって言ってるだろ?」

「……えっ?」

「ほんっと、お前は昔からバカのひとつ覚えみたいに“翼、翼”ばっかり言ってたよな。現実を見ようともしないで、夢見てるみたいだとか言ってるところも全く変わってないし」

「……」


……ま、待って。ちょっと時を止めてください。神様、仏様。

私の目の前で大袈裟なほど大きなため息をついている、口の悪い男。

あのやさしくて穏やかな翼くんの口から「鈍感女」だとか「バカ」だとか、そんな言葉が出てくるわけがない。

そして、このブラック過ぎるオーラも。

じゃあ……?
 
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