再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 

午後からも引き続き、今月分の案件をまとめる作業を進めている。

途中、見積書作成と発注作業が入り、作業をしているうちに気づけば定時近くになっていた。

きりがよくなったところで、私は腕を伸ばして背伸びをする。

明日も引き続き取りまとめ作業を進める必要がありそうだと思いながら身体の力を抜いたとき、男女が会話をしながらオフィスに入ってきた。

航くんと藤岡さんだ。


「やっぱり足元のライトをつけたの、正解だったでしょ」

「そうだな」

「大事なウエディングドレスだし、足元までしっかり見てもらいたいものね」


今日は航くんが担当している案件のひとつである完成間近のブライダルの改装の現場に、航くんたちは朝から足を運んでいた。

そして、私が企画資料を見せてもらった時点では知らなかったけれど、藤岡さんもこの案件の担当者のひとりだ。

他にももうひとつ、ふたりがタッグを組んで担当している案件があるため、この2ヶ月くらいは藤岡さんがよく航くんのところに来て話している。

イタリア出張もその案件のためだったらしい。

ふたりはよく言い合いをしているけれど、いつも楽しそうだ。

藤岡さん相手だと航くんはよくくだけた笑顔を見せるし楽しそうだから、仕事だからと言い聞かせているとは言え、ちょっぴりヤキモチを焼いてしまうこともある。

彼と真正面からぶつかり合える藤岡さんのことが羨ましい。

いい加減慣れなきゃいけないなと思いながらパソコンに再び向かったとき、航くんに呼びかけられた。


「梶原さん。ちょっといいか」

「はい」


振り向くと、航くんに笑顔はなく仕事モードの表情をしている。

彼と付き合うようになっても、彼は相変わらず仕事中は私の前ではほとんど笑わない。

以前問い詰めたときは「仕事中にニヤニヤしてたらおかしいだろ」と突っぱねられた。

それでも、仕事に恋愛を持ち込みたいと言っているわけじゃないのだから、会話の内容にもよるけれど少しくらい笑顔を見せてくれてもいいのにと思う。

だって、藤岡さんには笑顔を見せているのだから。

……って、結局私情を持ちこんじゃってるし!
 
< 145 / 196 >

この作品をシェア

pagetop