再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 
1時間半ほど残業し、カップを洗うため給湯室に向かう。

洗い物を済ませてから辺りの片付けをしていると、普段は開けたままになっている給湯室のドアが小気味いい音で鳴った。

振り向くと航くんがいた。

思わず頬が緩む。


「瀬戸さん。お疲れ様です」

「お疲れ様。もう帰る?」

「はい、そのつもりでしたけど……もしかして何か緊急の作業がありますか?」

「いや。聞いてみただけだから大丈夫」

「それならよかったです。瀬戸さんは? まだ帰らないんですか?」

「んー、まだ。調整したいことがあってさ」

「そうなんですか……あまり無理しないでくださいね。あっ、来週のブライダルの件、すごく楽しみです!」


あの場では藤原さんもいたしミーハー心全開で「楽しみ」だなんて言えなかったけれど、今は航くんしかいないし大丈夫だろう。

そんな私の様子に彼は小さく笑みをこぼした。

それは私が知っている航くんの気の緩んだときの表情で、私の心臓が嬉しそうに音をたてる。


「そんなに嬉しい?」

「はい、すごく。わくわくしちゃいます。あっでも、仕事として行くことはちゃんとわかってますし、行くからには私も役に立てればと思ってるので、作業があればどんどん言ってください。私にできることならなんでもしますから」

「了解」


会話をしながら片付けを終えて手を洗った私は、閉められたドアに軽く寄りかかるように立つ航くんに歩み寄る。
 
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