再会した幼なじみは黒王子? ~夢見がち女子は振り回されています!~
 

車を降りると、ブライダル会場の外観が目に映った。

街中にも関わらずたくさんの鮮やかな緑に囲まれていて、まるで自然いっぱいのリゾート地に来たような感覚になる。

残念ながら太陽の光はないけれど、たっぷりの水を浴びて潤った緑たちはどこか嬉しそうだ。

そんな光景を横目にエントランスから建物の中に入ると、ロビーの奥の方に大きな窓があり、外の緑を取り込むような空間が広がっていた。

上方から空間を照らす照明も雰囲気を壊さず、とてもきらびやかだ。

素敵な空間に魅了され、仕事中だということをつい忘れそうになっていたとき、会場スタッフがやってきて挨拶を交わした。

現地集合だった建築士などもほぼ同じタイミングでやってきて、私たちは早速チャペルに向かい始めた。


チャペルは建物の奥にあり、その入り口の手前には待ち合いスペースがある。

前を歩いていく航くんたちの話を聞いているとこの辺りも改装を行ったらしく、照明の明るさや空間のバランスについての確認を進めているようだ。

航くんが実際に現場で仕事をしている姿を見るのは初めてだけれど、真剣な表情なのにすごく楽しそうで、彼がこの仕事に誇りをもっていることを改めて感じた。

彼のそんな姿に、私もなんだか誇らしくて嬉しい気持ちになる。

ふと航くんたちの足が止まり、後ろを歩いていた私も立ち止まる。


「あぁ、オブジェ、完成したんですね」

「はい」

「……うん、空間にとても合ってますね。相模(さがみ)さんのデザインはいつも素晴らしいです」

「お誉めくださりありがとうございます。最初は少々不安でしたが、瀬戸さんのアイディアやご意見のおかげで無事に生みだすことができました」

「いえ、私は口を出しただけですから。提案したときにも言いましたけど、もともとはアシスタントの発案でして」


航くんたちの会話は続いているけれど、オブジェという単語や航くんのテンションの高まった声色に、その正体が気になってしまう。

彼らの隙間から話題の中心になっているらしいオブジェを探すと、淡く光を放つオブジェが見えた。

ガラスでできた球体の中には緑や生命を感じさせる空間が詰め込まれており、以前航くんと行ったアートアクアリウムを思い起こさせるものだった。
 
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